以前、「決まった日に食べる京都の食文化」について紹介しました。
京都の食文化には、季節や行事に合わせて食べるものが数多くあります。
こうした季節感を大切にする文化は、日々のおかずだけでなく和菓子にも受け継がれています。
今回は、京都で特定の季節や日、行事などに合わせて食べられている和菓子を、1月から順番に紹介していきます。
1月
はなびら餅
はなびら餅は、主に正月に食べられる伝統的な和菓子です。
丸く伸ばした白い餅の上に、紅色の菱餅と味噌餡、甘く煮た牛蒡をのせ、二つ折りにして仕上げます。
白と紅の色合いや牛蒡の形にも、それぞれ意味が込められており、新年を祝う菓子として親しまれています。
2月
法螺貝餅
法螺貝餅は、節分に合わせて作られる京都ならではの和菓子です。
小麦粉を使った生地に白味噌餡を包み、法螺貝の吹き口に見立てた牛蒡を巻いた、特徴的な形をしています。
その名の通り、法螺貝をかたどった菓子ですが、その背景には京都・聖護院の修験道文化があります。
幕末の安政元年(1854年)、安政の大火によって御所が炎上した際、孝明天皇は一時的に聖護院門跡を仮御所とされました。その際に、この法螺貝餅を召し上がったと伝えられています。
聖護院門跡は、山に籠もって厳しい修行を行う修験道と深い関わりを持つ寺院です。修験者である山伏が修行の際に用いる代表的な法具の一つが法螺貝であり、これが法螺貝餅の名前や形につながっています。
現在も節分の日の1日のみ販売され、販売店も東山区の柏屋光貞に限られています。
きつね面
「きつね面」は、伏見稲荷大社の初午大祭の際に茶席などで提供される菓子です。
白い煎餅のような食感の菓子で、白狐の顔をかたどった独特な形をしています。
伏見稲荷大社といえば稲荷大神の使いである狐が有名ですが、その狐をモチーフにした、伏見稲荷ならではの季節の菓子です。
3月
引千切(ひちぎり)
引千切は、3月3日の雛祭りに欠かせない京都の和菓子です。
餅やういろうの一端を引きちぎったような特徴的な形をしていることから、「引千切」と呼ばれています。
ういろうをベースにした生地の上に、きんとんや餡などをのせて仕上げます。春の訪れを感じさせる、雛祭りの時期ならではの和菓子です。
5月
かしわ餅
かしわ餅は、5月5日の端午の節句に食べられる代表的な和菓子です。
餅の中に餡を包み、柏の葉でくるんで仕上げます。餡には小豆餡のほか、京都では白味噌餡を使ったものも親しまれています。
柏の葉は、新しい葉が育つまで古い葉が落ちないことから、家系が途切れない「子孫繁栄」の縁起物とされてきました。
粽(ちまき)
粽も、端午の節句に食べられる和菓子です。
京都で「粽」と聞くと、祇園祭の山鉾町などで授与される、厄除けのお守りとしての粽を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
しかし、端午の節句に食べる粽は、米粉などを使った団子を笹の葉で包んだもので、こちらは食べられる粽です。
京都では、米粉の団子だけでなく、葛練りや羊羹などを笹の葉で包んだ粽も見られます。
6月
嘉祥菓子
嘉祥菓子は、6月16日の「和菓子の日」に食べられる菓子です。
6月16日は、古くから厄除けや無病息災を願って菓子を食べる「嘉祥」の風習と結びついています。
特定の菓子が決められているわけではなく、京都の和菓子店では羊羹や和三盆など、さまざまな菓子を詰め合わせた嘉祥菓子が販売されます。
水無月

水無月は、6月30日に食べる京都を代表する夏の和菓子です。
6月30日は、京都各地の神社で「夏越の祓」が行われる日。1年の折り返しにあたるこの日に、半年間に身についた穢れを祓い、残り半年の無病息災を願います。
水無月は、三角形に切ったういろうの上に小豆を敷き詰めた形をしています。
三角形のういろうは氷室から取り出した氷を、小豆は邪気払いを表しているとされ、暑さを乗り切り無病息災を願う京都の夏の風物詩となっています。
7月
稚児餅
稚児餅は、祇園祭にちなんだ和菓子です。
7月13日に行われる長刀鉾の稚児社参の際、八坂神社境内の二軒茶屋 中村楼から稚児に献じられることから、その名が付いています。
稚児餅は一般にも販売され、祇園祭の時期には多くの人が味わう季節の和菓子となっています。
販売期間は7月13日から7月31日までです。
行者餅

行者餅も、祇園祭の時期に食べられる京都ならではの和菓子です。
その由来は、文化3年(1806年)に疫病が流行した際、東山区の柏屋光貞の当主が大峰山(奈良県)で修行中に霊夢を受けて作ったことに始まると伝えられています。
作られた行者餅は、祇園祭の山鉾巡行に参加する役行者山に供えられ、これを食べた人々が疫病を免れたことから、無病息災を願う菓子として受け継がれるようになりました。
小麦粉を使ったクレープ状の生地で白味噌餡を包み、山椒を加えた独特の味わいが特徴です。白味噌の甘さの中に、山椒のピリッとした風味がアクセントになっています。
販売されるのは祇園祭期間中の7月16日のみ。東山区の柏屋光貞で販売され、早朝から開店を待つ人の行列ができることでも知られています。
11月
亥の子餅
亥の子餅は、旧暦10月の「亥の日」に食べる和菓子です。
現在の暦では11月頃にあたり、特に茶道の世界では炉開きの時期に合わせて用いられます。
猪が多産であることにちなみ、子孫繁栄や無病息災を願う意味が込められています。
このように京都の和菓子には、単に季節の食材を使うだけでなく、年中行事や祭礼、厄除け、無病息災など、京都の暮らしや文化と深く結びついたものが数多くあります。
季節の移ろいを感じながら、その時期ならではの和菓子を味わってみるのも、京都観光の楽しみ方の一つではないでしょうか。


