京都には数多くの神社があり、春から秋にかけて、京都市内のどこかで神輿が巡行していると言ってもいいほど、さまざまなお祭りが行われています。
当宿のある室町五条は、伏見稲荷大社の氏子地域。毎年5月に行われる稲荷祭では、伏見稲荷大社の神輿が当宿から歩いてすぐの五条通を巡行します。
伏見稲荷大社の稲荷祭も非常に規模の大きなお祭りですが、京都を代表する祭りとして、さらに全国的に知られているのが「祇園祭」です。
祇園祭は、東山区に鎮座する八坂神社の祭礼。巨大な山鉾が京都の町を巡行する「山鉾巡行」が特に有名ですが、実は祇園祭は7月の1ヶ月間にわたって、さまざまな神事や行事が行われる長い祭りです。
山鉾が建ち並ぶのは、当宿から北へ徒歩15分ほどの四条烏丸周辺を中心とした地域。前祭23基、後祭11基の合わせて34基の山鉾が、それぞれの町で建てられます。

今回は、祇園祭を初めて訪れる方にもおすすめしたい、観光客が楽しみやすい主要な行事を時系列で紹介します。
7月9日〜7月14日 前祭山鉾建て

前祭の山鉾23基が、各町内で組み立てられていく期間です。
山鉾建ての日程は山鉾ごとに異なります。7月10日ごろから一斉に始まる山鉾が多い中、長刀鉾では7月10日より前の9日から組み立てが始まります。その後、月鉾などの大型の山鉾も順次組み立てられていきます。
完成した山鉾を見るだけでなく、縄だけを使って部材を固定する「縄がらみ」など、山鉾が組み上がっていく過程を見ることができるのも、この時期ならではの楽しみです。
普段はオフィス街として賑わいを見せる市内中心部に、数日かけて巨大な山鉾が姿を現していく様子は、祇園祭ならではの光景です。
7月10日 お迎え提灯

お迎え提灯は、神輿洗のために八坂神社から出発する神輿を迎える、華やかな行列です。
行列には提灯を掲げた人々のほか、年ごとの交代制で参加する山鉾町の囃子方、鷺舞、小町踊、祇園祭音頭の演者などが加わります。
八坂神社を出発した行列は、四条通や河原町通を進んで京都市役所へ向かいます。市役所では鷺舞、小町踊、祇園祭音頭などが奉納され、その後、寺町通から四条通を経て八坂神社へと戻り、八坂神社でも踊りの奉納が夜10時ごろまで続けられます。

7月10日 神輿洗

神輿洗は、八坂神社の3基の神輿のうち、中御座神輿を四条大橋まで運び、鴨川の水で清める神事です。
祇園祭において、初めて神輿が登場する行事が神輿洗です。
神輿が四条大橋へ向かう前には、巨大な松明を担いだ一行が八坂神社から四条大橋までを往復し、神輿の通る道を清めます。
松明による道清めが終わると、中御座神輿が四条大橋へ向かい、鴨川の水で清められます。

7月14日〜7月16日 宵山

山鉾が完成し、いかにも夏祭の雰囲気を身近に感じられるのが宵山です。
夕方から夜にかけて山鉾に駒形提灯が灯され、各町内では祇園囃子が奏でられます。山鉾町では粽などの授与品が販売され、町家や会所では山鉾を飾る懸装品などが公開されることもあります。

7月17日 山鉾巡行

祇園祭を代表する行事の一つが、7月17日に行われる前祭の山鉾巡行です。
23基の山鉾が四条烏丸を出発し、四条通から四条河原町、河原町御池を経て、新町御池へと向かいます。
見どころの一つが、四条麩屋町で行われる長刀鉾の「しめ縄切り」。長刀鉾が四条通を進み、張られたしめ縄を刀で切ることで、山鉾巡行が正式に開始され八坂神社の神域へと進んでいきます。

最大の見どころは、交差点で巨大な山鉾の向きを変える「辻回し」です。舵の機能を持たない鉾の車輪の下に竹を敷き、水をまいて滑らせながら、音頭取りの掛け声に合わせて鉾を方向転換させます。

7月17日 神幸祭

祇園祭というと山鉾巡行が有名ですが、祇園祭の本質ともいえるのが、八坂神社の神輿による神幸祭です。
前祭の山鉾巡行は、八坂神社の神輿を迎えるために京都の町を清める意味を持つ行事。そして夕方になると、いよいよ3基の神輿が八坂神社を出発します。
神輿はそれぞれのルートを進み、京都の町を巡った後、四条寺町にある八坂神社御旅所へ向かいます。
御旅所に到着した3基の神輿は、7月24日の還幸祭までここに鎮座します。

7月18日〜7月21日 後祭山鉾建て

前祭の山鉾巡行が終わると、翌日からは後祭の山鉾建てが始まります。
後祭では11基の山鉾が建てられます。前祭に比べると観光客の数も比較的少なく、山鉾が建ち上がっていく様子をゆっくり見て回りたい方にはおすすめの期間です。
7月21日〜23日 後祭宵山

前祭の宵山と比べると、夜店が並ぶこともなく、四条烏丸周辺を中心に大勢の観光客で埋め尽くされる前祭とは違った、落ち着いた雰囲気を楽しむことができます。

7月24日 後祭山鉾巡行

後祭では11基の山鉾が巡行します。
前祭とは巡行ルートが逆になっており、新町御池を出発して河原町御池、四条河原町を経て、四条烏丸へと向かいます。
後祭では、前祭の長刀鉾や月鉾のような大型の鉾は大船鉾の1基のみ。
小型の橋弁慶山や鯉山、中型の北観音山、南観音山など、それぞれに個性豊かな山鉾を見ることができます。

7月24日 還幸祭

7月17日の神幸祭で四条寺町の御旅所へお移りになった3基の神輿が、八坂神社へお帰りになるのが還幸祭です。
夕方から3基の神輿は御旅所を出発。京都の町を巡りながら夜11時過ぎに八坂神社へと向かいます。
山鉾巡行に比べると観光客にはあまり知られていませんが、激しく担ぎ上げられる神輿、担ぎ手たちの掛け声、沿道に集まる人々など、祇園祭の熱気を間近に感じられる行事です。
7月27日 神輿洗・お見送り提灯

還幸祭にて八坂神社に戻った神輿を四条大橋にて鴨川の水で清めて、祇園祭はいよいよ終了です。
また、神輿洗の儀式を終えて八坂神社へと戻る神輿を盛大にお見送りするのが、「お見送り提灯行列」です。
祇園商店街のお店を中心に、下駄やオムレツ、魚など、それぞれのお店にちなんだユニークな提灯が掲げられ、個性豊かな提灯が夜の祇園の町を彩ります。
これまでの厳粛な神事とは一転して、どこかユーモラスで温かな雰囲気に包まれるのも、お見送り提灯行列の魅力。沿道から眺めている人たちも思わず笑顔になる、祇園祭の中でもひと味違った楽しい行事です。
祇園祭というと「山鉾」のイメージが強いですが、実際には山鉾と神輿、そしてそれを支えるさまざまな神事によって成り立っています。
7月の京都を訪れる際には、ぜひ山鉾巡行だけでなく、その前後に行われるさまざまな行事にも足を運んでみてください。


